家族はエロくてグロいもの

とは、古典エッセイスト・大塚ひかり氏の言葉です。具体的には、平安貴族が近親姦だらけだったこと、角田美代子事件は相手を「家族」にすることで民事不介入に持って行ってる、ということなど。詳しくはこちらのサイトでどうぞ。で、この対談中で、家族に対する意識が変わってきたため、近親婚に対して厳しい視線が向けられるようになったという指摘があります。

確かに変わりました。なにせ平安時代から1000年以上が経過。だから角田美代子事件のように「グロい」ことはまだあるけど、さすがに「エロい」ということは現代日本じゃないだろう、平安末期や終戦直後ならともかく、と思ってました。が、よくよく考えたらありましたよ。「エロい」と「グロい」双方を兼ね備えたものが。

それは医療分野、特に

移植・生殖医療といった「血の繋がり」がモノを言うジャンル

です。ちょっと以下に具体例を上げてみます。まず、移植医療編。

  1. 移植が必要な上の子を助けるために、体外受精&遺伝子検査で白血球の型の合う弟妹をわざわざ作る
  2. 本人は乗り気でないのに、親族から怒涛の勢いで迫られドナーにさせられる

続いて生殖医療編は

  1. 無精子症の夫の代わりに、義父(または義兄弟)の精子提供により妻が出産
  2. 妻の姉妹による卵子提供
  3. 母と娘の代理出産
  4. 姉妹間の代理出産
  5. 義理の姉妹間での代理出産
  6. 本人は乗り気でないのに、親族から怒涛の勢いで迫られ代理母にさせられる

のような具合。

こうしてリストにしてみると、生殖医療の方が多いですね。そして移植医療の方は「グロい」単体ですが、生殖医療の方は「エロい」と「グロい」双方を見事に兼ね備えています。なぜかと考えるに「生殖」となると、どうしても性交渉が頭をよぎるから、そして実際遺伝子を混ぜているから、ではないのか。要は科学的不倫のような気がしてしまうのです(←私だけか?)。特に生殖医療の1.2.4.5.のケース。舅の、義兄弟の、実の兄弟の子供を産む(または作る)。人工授精だから・体外受精だから・性交渉してないから・自分の遺伝子入ってないから・不倫じゃない!近親姦じゃない!と必死で言い訳しているように見えます。特に1.のケース。自然受精だったら、絶対やる人いないでしょう。もしかしたら「これは家族愛なんだ!」という反応が返ってくるかもしれませんが、そうだったらもっとエロく見えてしまうのでは。

上記の事柄は技術的に「やればできる」のですが、果たしてそれでいいのか?と、問いたくなる課題ばかり。もうこれは倫理学や宗教者の出番ではないのか。と思って、厚生労働省の厚生科学審議会(生殖補助医療部会)のサイトで会の委員について調べてみたんですが、宗教者が一人もいないように見えました。なぜ?政教分離だから?それとも考えが及ばなかっただけ?少なくとも、仏教各宗派と神道代表及びカトリック・プロテスタントの意見は聞いた方がいいのでは。

蛇足:「義父による精子提供」を積極的に手がけている長野の某医師。第一印象は「ヒルメスや奇子を大量生産してどうするんだ」でした。もうこの人は医師ではなく、ゴタルゼス二世に余計なことを吹き込んだ呪術師にしか見えない。

偉人伝の謎①

前回に引き続き、偉人伝話。

主に小学生の頃に、たくさん偉人伝を読んでました。(半分は学習漫画)で、大量に読み込んでいるうちに、だんだんと疑問や引っ掛かりを感じることが多くなりました。しかもいくら読み込んでも、よく分からない・全然理解できないものばかり。不愉快なモヤモヤが心に溜まっていきました。列挙するとこんな感じ。

  1. シューベルトの死に方が急すぎる。元から体が丈夫でないとは言え、こんなにアッサリ死ぬのか?(食あたりか腸チフスで寝込む→無理して悪天候の中、ベートーベンの葬儀に出席→更に体調悪化し死亡)
  2. チャイコフスキーの人生、女っ気なさすぎ(結婚には失敗、資産家女性からの資金援助はなぜか途中で断る)
  3. ナイチンゲールが「看護婦になりたい」と言った時の家族の反対が激烈すぎ(当時は看護婦=だらしない女性、のイメージがあったとは言えここまでか?)
  4. シューマンが入院した後、自殺未遂を繰り返すに至ったその過程が不明瞭(創作が行き詰まってノイローゼになったのかと思った)
  5. 野口英世が研究していた「梅毒スピロヘータ」という病気の説明が大雑把すぎて意味不明(チフスやコレラの説明文とは明らかに違い、感染経路も症状も全然書かれていない)
  6. ヘレン・ケラーの人生が勉強と講演ばかり。それで人生楽しかったのか?(障害者の恋愛、は時代からしたら難しかったかもしれないが、それで良かったのか?)

これらのモヤモヤ、成人したあたりから、少しづつ溶けていきました。まあ、結論からいうと

性にまつわるエトセトラ

だったのです。具体的にあげると

  1. もともと梅毒、及び水銀療法のため体力がおちていたから
  2. チャイコフスキーはゲイだった
  3. だらしない、とは「性的な意味で」だった(要は娼婦のイメージがあった)
  4. シューマンの精神疾患は、梅毒の末期症状
  5. 梅毒は性感染症のため、子供向けの本では詳しく説明できなかったから
  6. 好きな人はいたらしいが、周囲が(特に母が)引き裂いた模様

ということでした。「偉人伝」ですもの、「聖人伝」ではありませんから。泥臭く生臭いエピソードがあって当然です。しかし1,4,5,が、「梅毒」という一つのキーワードで繋がってしまったのはびっくりでした。どんだけ流行してたんだ。

野口の伝記について:梅毒が説明しづらい病気だとしても、梅毒の説明が不完全だと、野口の功績がうまく伝わらないのでは?「一部の精神疾患は感染症が原因で起こる」ということを発見した功績が。高校生くらいで性教育も絡めて、しっかり教えてもいいんじゃないかと思います。親から苦情が来ても「偉人の生涯について教えました」と言えばなんとかなるかも。

ちなみに、梅毒の説明文は脚注で「梅毒スピロヘータによって引き起こされる、恐ろしい法定伝染病」と書かれていた感じでした。梅毒が「梅毒スピロヘータ」によって引き起こされる、というのは本文中で既に説明されているし、恐ろしいからこそ「法」で「定」められていて、野口が必死こいて研究してるんだろう!もうトートロジー、同語反復のカタマリで説明になっていませんでした。不親切すぎて腹が立つ文章でした。