口がきけない子の話 4 確信

小学5年も3学期に入り、またしてもグループ学習の時、先生はMさんを私のグループに連れてきました。「二度ある事は三度ある」のことわざ通りに。鈍チンの私はここでようやっと気づくわけです。

「これは絶対に偶然じゃない。明らかに、先生はこの子を私に押し付けている」

と。正直に心の声を書いてしまうと「うわぁ……またかよ…」という明らかなうんざりモードが大半でした。実は前回の2度のグループ学習の他にも、授業で「(好きな人同士)2人組を作りましょう」という時に、Mさんと組んだことが何度かあったんですよね。理由は当然、先生が連れてきたから! 「なんで私は、この子といつも一緒なんだろう?」と、疑問が芽生え出した所でして。状況的に、Mさんの意思だとは考えづらかったのです。なにせMさんは、先生とも話せなかったのですから。

うんざりしてるなら断れよ、と思われるかもしれませんが、断れませんでした(泣)。理由は以下の3つです。

  1. 先生が巧妙
  2. 私が「前向きな勘違い」をしてしまった
  3. 私がMさんに同情してしまった

と言っても、2. と3.が主になりますが。

まず、1.の理由。先生がMさんをわたしのグループに連れて来る時は、必ずその他全てのグループに断られた後だったのです。その状態で断わるなんて、とてもとても。Mさんの行く所がなくなってしまって、こちらがいかにも悪人、になってしまいます。

次に2. の理由。「前向きな勘違い」とはなんぞや?というと、私の頭に一瞬浮かんだ、以下の様な考えのことです。

「私は心優しい優等生だから、先生から信頼されているんだ!!よーし!頑張っちゃうぞー!!」

とorz。実にオメデタイ。しかも「心優しい優等生」って、自分で言うなって感じです。が、当時の私はクラスでは成績上位者。特に周囲とトラブルを起こしたこともない。「心優しい優等生」と言う単語が、そこそこマッチしていました(はず)。うんざりしながらも、私って頼りにされている!期待されてる!と多少の誇らしさを感じて引き受けてしまいました。

で、大半はうんざりモードで始まったグループ学習。私がMさんに話しかける頻度は、明らかに減りました。幾ら話しかけてもMさんは、ひたすらだんまり状態。もう、「耳聞こえないのか?」と疑うレベル。どころかちょっと話しかけると、ビクッと硬直してしまう。そして話しかければ話しかけるほど、下を向いて小さくなってしまうのです。なんだかこちらが悪い事をしているみたいで、実に気まずい。当然Mさんと一緒にいてもぜーんぜん楽しくない。Mさん本人も、私達といてもあまり楽しそうに見えませんでした。

その他の面でもMさんは、相変わらずでした(悪い意味で)。成績は低空飛行。授業中教科書の読みが当たっても、そちらの方向からは何も聞こえてこない。恥ずかしがり屋にも程がある、というかいつまで恥ずかしがってんだ?と苛立ちすら覚えましたね。肌も小1の頃と同様、ボロボロのまんま、顔が赤と白のホルスタイン状態になってました。(赤→炎症を起こしている所・白→乾燥して粉を吹いている所)私も少しよくなったとは言えアトピー体質。なのでそれが辛い・酷い状態なのはよくわかる。で、彼女を見ているとこっちまで痒くなってしまうのです。それを避けるため、出来るだけ彼女を凝視しないことを心がける様になりました。痒くなっても、Mさんが薬代を払ってくれるわけではないので。そして、真冬なのに臭う。その上Mさんは、異常なほどの痩せ型。単に痩せているだけ、なら別に気になりませんが、ここまで欠点が揃い踏みだと、どうしても穿った目で見てしまいます。「この子の家庭ってどうなってんの?何で欠点だらけのまま放置されてるの?」と。

これが3. の「同情」の理由です。欠点のカタマリの様なMさんを、突き放すなんて酷いことはできませんでした。だって私は「先生から信頼され、期待されている」・「心優しい優等生」。期待に応えなければ!という使命感?と、落ちこぼれには優しくしなくては!と言う謎の義務感?の様なものが、私を縛っていました。ノーブレス・オブリージュの亜種みたいなものでしょうか。

投稿者: 管理人富永

関東在住。気がついたらアラフォー。女性。

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