口がきけない子の話 3 変化

さて、小学5年生も二学期に入った9月下旬、私はまたグループ学習でMさんと同じグループになりました。いきさつは前回とほぼ同じ。「好きな人同士」で、私が友人数名とグループを組んでいた所に、先生がやはりあぶれていたMさんを連れてきたのです。

「この子を入れてあげてくれる?」

と。この時は「えっ?またなの?」と、ちょっと戸惑いました。(その時も私はリーダーだった)でもまだ2回目、これは偶然の範囲だろう、と無理矢理自分を納得させて受け入れました。しかし同時に、一瞬嫌な予感がしたのも事実です。「二度ある事は三度ある」、このことわざが脳裏に浮かびました。

そしてグループ学習が始まったのですが、やはりMさんは全く口をきかない。これにはかなり戸惑い、困りました。グループ学習とは皆で話し合って行うものなのに、話し合い自体が成立しない場合どうやって進めたらいいのでしょうか。

質問、そんなに難しかった?それとも私はそんなに怖い人間なの?

とにかく、彼女にも楽しくグループ学習して欲しかったので、個人的にあれこれ工夫してみました。例えば以下のように。

  • 質問を、Yes/Noで答えられる簡単なものにする
  • 何かにつけ、しょっちゅう笑いかける
  • 一発ギャグをかます

等々。でも、彼女は一言も発さないのです。流石にYes/Noは、首振りで答えてましたが。何となく嬉しそうな雰囲気はあったのですが、彼女は大抵下を向いていたので正確な表情が読めず、「喜んでいる」とも断定できない。しかし、Mさんを放ったらかしにするわけにもいかないので、そこそこ話しかけるのですが、いくら話しかけても返ってくるのは9割方沈黙(1割は首振り)。毎度毎度、暖簾に腕押し・糠に釘状態。私や周囲が幾ら工夫しても、それが殆ど報われないのです。虚しいやら困るやら。

原稿の清書を頼もうにも、彼女の書く字は例の「釘を曲げた様なカクカク文字」。とてもじゃないが、頼めるものではありませんでした。

そして、梅雨が終わっていたにも関わらず

Mさんは相変わらず臭っていました。

そして、やっぱり周囲の誰も指摘しない。私もその一人でしたが、それは「子供が臭うのは親の責任」だと思っていたため。Mさんを責めてもどうしようもない、悪いのはMさんの親だ、と考えていたからです。本当に臭い人に対して、面と向かって「臭い!」とはなかなか言えないもの。私にできることは、先生が3者面談等でMさんの親に指摘してくれることを期待する事と、Mさんの近くに寄る際は息を止める事、位でした。で、先生はMさんから漂う異臭に気付いていたのか?というと、「多分、気付いていた」と思います。先生はかなりMさんの近くに寄っていましたから。背後からMさんの両肩に手を置いて、「ねっ!」みたいな事もやってましたし。

こうして、私のMさんに対する印象は、確実に変わって行きました。それも悪い方に。「人畜無害な変人」から「グループ学習のお荷物」へと。

投稿者: 管理人富永

関東在住。気がついたらアラフォー。女性。

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