口がきけない子の話10 喃語

この「口がきけない子の話」シリーズの「1」にて、「Mさんが人語を話しているのを聞いた事は、一度もない」と書きました。なぜ「人語」、とわざわざ書いたのか?といいますと、彼女はそれ以外だったら時々口にしていたからです。独り言で。んじゃ、何語を話してたのか?といいますと、それは

喃 語

要は赤ちゃん言葉ですね。具体的には「アー」・「ウー」と、かなり小さな声でしたが発していました。言葉、というより音声、というべきか。特に意味のある言葉は発していませんでした。私の感想は、

「へぇ、そんな声してるんだ」

というもの。そして

「あぁ、この子は赤ちゃん言葉しか話せないんだな」

と直感。ついで心に浮かんだのは、

「頭の中も赤ちゃんなんだろうか?」

という疑問。「声は出せるが言葉にならない」理由が、「言葉を理解していない」以外に思いつかなかったのです(これを補強したのが例の20点のテスト)。私にとって、Mさんの独り言は、彼女の「知的障害疑惑」を濃くする作用しかもたらさなかった模様です。結果として、彼女に話しかけるのがますます億劫になってしまいました。乳児並みの頭の人に、あれこれ話しかける意味あんのか?みたいな。私が沢山話しかけたら、Mさんはもしかしたら嬉しかったのかもしれません。が、別に私は好きでMさんとつるんでいるわけではなかったので、進んで彼女のご機嫌取りをする気にはなれませんでした。それよりも、課題を仕上げる方が重要でした。なにせMさんは、グループ学習の際、さっぱり戦力にならない人。それにMさんに話しかけたとしても、先生はそこを評価してはくれません。

口がきけない人は、周囲から「『あ』って言ってみて ! 」と、しつこく言われることに辟易していることが多いようです。私はこのセリフを言ったことはありません。それは上記の通り、声自体は聞いたことがあったからです。

…「声は出せるが言葉にならない」理由、もう1つありましたね。「話したくないくらい、私のことが嫌い」という理由が。どっちにしても、当時Mさんに積極的に話しかける必要はなかった、ということに変わりはないのですけれど。

投稿者: 管理人富永

関東在住。気がついたらアラフォー。女性。

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