私は、「その子」と出会ったのは小学1年生の時のこと。そして、小学1・2、5・6及び中学3年生の5年間、同じクラスでした。(小学校のクラス替えは2年ごと)先に結論を書いてしまうと、その5年の間、彼女が「人語」を話しているのを聞いた事は一度もありません。彼女のことを、以下「Mさん」と呼びます。
実は小学1・2年時は、同じクラスにいながら、Mさんとは殆ど接点がありませんでした。覚えているエピソードは以下のものだけです。
第一のエピソードは、
「国語のテストで、クラス最低点をとっていた」
こと。確か単元は「たぬきの糸車」で点数は「20点」でした。何で私が知っているのか?というと、クラスの男子が騒いでいたから。
「おい、こっち来てみろよ!すんげーバカがいるぜ!」
と。んで私、野次馬根性丸出しで見に行ったところ、クラスメイトの輪の中で、Mさんは自席に座っていました。20点のテストをドーン!と机の上にのせて。「見ないでよ!」とは言われなかったですね。しっかし普通、テストで悪い点を取ったら人に見られないように、裏返すなり隅っこを三角に折るなりするのに、Mさんはそれをやっていませんでした。(だから点数がわかった)かと言って、「さぁ、見てくれ!」と胸を張っている訳でもなく、彼女はひたすら下を向いて黙って固まっていました。(表情は読めなかった)この子は、テストを見られたいのか・見られたくないのか、それすらわからなかったことをよく覚えています。
そして、ある設問とその回答も忘れられません。「作中の月の形をひらがな4文字で書け」という設問がありまして、正答は「まんげつ」でした。が、何とMさんの回答は「みかづき」だったのです。一瞬「どの辺りが、’みかづき’なんだ!?」と面食らいました。しかもその文字が、釘を曲げたようなカクカクした文字。まるでサスペンスドラマの脅迫状みたいで、少し怖かったですね。。
第二のエピソードは、「休み時間に一人で机を見つめていた」こと。私が休み時間に友人の席で話し込んでいた時、ふと顔を上げると少し離れた自席で一人座っているMさんが。Mさんは、ひたすらじいっと机を見つめていました。折り紙する訳じゃなし、お絵描きする訳じゃなし。「机を見つめていると、何かいいことがあるのか?変わった人だな」と不思議に思いました。
第三のエピソードは、「とにかくいつも下を向いていた」こと。当時、何かの拍子にクラスの女子全員が輪になった事があるのですが、やっぱりMさんは下を向いていました。ハンカチを手に持って口に当てて、モジモジしながらもどこか嬉しそうな感じはしていたのですが、彼女は一言も喋らないのです。なので彼女の本心は奈辺にあるのか、全くわからない。
その他のエピソードとしては、Mさんは顔と体の皮膚がいつもボロボロだったこと。しかし私もアトピーだったので、人の事は言えませんでしたが。まぁ、お互い大きくなったら良くなるだろうと漠然と考えていたので、それは気になりませんでした。また授業中、教科書の読みが当てられても、Mさんの方向からは何も聞こえませんでしたが、これも気になりませんでした。入学したてで緊張してるんだろうと思えたので。それに、声が小さくて聞こえない女子は他にもいましたし。
小学1・2年時のMさんの印象をまとめると、以下のものになります。
「すごく大人しくて、成績の悪い子」
「よくわからない、不思議な人」
要は「人畜無害な変人」。このままでいられればよかったのですが、その後そうではなくなるのです。残念な事に。その後の3年間で、私は彼女と嫌な思い出を山程作ってしまう事態になるのです。